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WEB美術展
 シュルレアリスムを中心に好きな美術を紹介。


ヨルグ・ブットゲライト Jörg Buttgereit

 「ネクロマンティック」「死の王」「シュラム」で知られるカルトムービーの大御所、ヨルグ・ブットゲライト。本国ドイツではあまりのグロテスクさに作品フィルムが焼却処分され、1993年以来新作の発表禁止処分すら受けている映画監督です。一から十まで完膚なきまでグロいので、苦手な方は絶対に観賞しないようにしてください。


「ネクロマンティック2」より






 こういった「死」を描くスプラッター・グロテスク作品は多々ありますが、多くの場合“安易な”「死」であり、そこに思想を求めることは出来ません。どうです気持ち悪いでしょう衝撃的でしょうグロテスクでしょうグヘヘヘ、といった作品からは一体何を得ることが出来るのでしょう。上の「ネクロマンティック」はそういった、エンターテイメント的なグロテスクを追求したもの。よって貴重な可処分時間を消費してまで観賞する価値はありません。

 しかし「死の王」で表現されている「死」は、十分に哲学的な内容を備えた“真摯な”「死」。意味のあるグロテスク性…グロテスクであることが必要なのです。極めて稀有な、現代のメメント・モリ。「自殺したくなる映画」との評価が多いですが、個人的にはやはりメメント・モリを、すなわち「死を忘れるな」といったニュアンスを感じます。鮮烈で理不尽でショッキングな「死」を通して、我々が内包する死や、死に至る人間の儚さを想起させる、とともに、死の新たな側面すら提示しているように思います。人間が沸騰するように腐っていく映像からは、並々ならぬこだわりが感じられます。
 「“死”は、“死”でしかない。それを撮りたかった」とはユルグ・ブットゲライトが来日した時に話した言葉です。映像として純化し抽出された「死」から何を読み取るかは人それぞれです。“開かれた”作品であることも指摘できるでしょう。

 ブットゲライトの作品は、非常に微妙なラインで、感知できるか出来ないか、綿毛ほどの微妙さで、ただのお馬鹿カルトホラーとは一線を画しています。多くの場合嫌悪感を感じるので、万人にオススメできる芸術ではありません。100人いたら99人は「最悪!時間の無駄!」と評価を下すことでしょう。グロテスクに耐性が無い方は絶対に不快になるので観てはいけません。波長が合うと、最悪なのは分かっているけど何故か切り捨てられない、というアンビバレンツを感じ数ヶ月に一度作品を観たくなるようです。私のことですが。

 オススメは断然「死の王」。次点で「シュラム」。「ネクロマンティック」は繰り返しますが、よっぽど物好きでもなければ観ない方がいいです。しかしブットゲライトの作品がDVD-BOXになってるのは日本ぐらいなものでしょうね。




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最低映画館 作品リンク


当局の監視を受けて以来は、比較的健全な(?)ビデオ・クリップを作成しているようです。


The Toxic Avenger Band - "God only knows"

変な怪獣オンパレード。音楽と全然合ってないよ!バンド名と曲名を何か勘違いしてます。


Dance or Die Teenage Makeup

これはいかにもブットゲライト。

Tok Tok VS. Soffy O - Missy Queen's Gonna Die

これもブットゲライト作品と思われます。まともなのも撮れるんですね。



おまけ。短編「キャプテン・ベルリン」

若かりし日の自主制作映画。うーん…。





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