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爆裂音楽名曲集
昔好きだったサイトに、爆裂する音楽をひたすら紹介する「爆裂音楽」というサイトがありました。オマージュの意を込めて爆裂音楽を紹介してみたいと思います。
アイヴス:交響曲第4番
爆裂度★★★★★
精神度★★★★★
爆裂といえばこれでしょう。大宇宙開闢の音。カオス。アイヴス(1874-1954)は比較的最近認知されてきたアメリカの作曲家。現代音楽の作曲家の中ではかなり聴きやすい部類です。
第1楽章 Prelude. Maestoso
ピアノの低弦による不思議な光沢感のある導入で始まる。合唱によって賛美歌「夜を守る友よ」が歌われる。不思議な音響空間。
第2楽章 Comedy. Allegretto
複数の指揮者によって様々な音楽が同時進行する。ヴァレーズの破壊を耽美にしたような音響。耳をつんざくカオスが炸裂。
第3楽章 Fugue. Andante moderato con moto
アイヴスいわく「実人生における諸要素の象徴」。一転して美しいコラール。さっきまでのはなんだったんだ。古典的な書法で書かれ、マーラーを連想させるような場面も。
第4楽章 Finale. Very slowly; Largo maestoso
この曲の真価はこの終楽章です。打楽器が宇宙の音を奏でる。艶やかなカオスが訪れ、浮遊する。もはや旋律とは呼べない異質の要素。中盤部に差し掛かると金管楽器が現われ、音楽が次第に膨張する。この膨張が実に爆裂、どこまでも、どこまでも、やめてくれ!ってぐらい膨張していきます。バイバインで増えた栗まんじゅうが宇宙を満たす!ちょっと違うか。終盤は合唱によって安らぎに満ちた賛歌が歌われます。
ベストオブ爆裂。宇宙が爆発する!なんて表現が可能なのは音楽だけです。
MTT@CSO
MTTことマイケル・ティルソン・トーマスの出世作。全集は素晴らしい。
レイフス:ヘクラ(火山)
爆裂度★★★★★
精神度☆☆☆☆☆
ヨン・レイフス作曲の「ヘクラ」。アイスランドの火山をモチーフにした爆裂音楽で、なんと19人の打楽器奏者が必要というトンデモ曲。ドッカーンズゴゴゴゴゴドジャーン!ともうただひたすらうるさい曲です。爆裂度は★5つ、精神的爆裂度は☆0個の珍曲。
他にも前奏曲「間欠泉」などがあります。こちらは吹き出る熱湯の表現が美しい佳曲。こう書くとなんかいやな前奏曲ですね。
推薦盤
レイフス:ヘクラ火山/アイスランド序曲/組曲「ロフトル」/北国の思い出/他
レイフス:ゲイジル
トゥビン:交響曲第2番「伝説的」
爆裂度:★★★★☆
精神度:★★★★☆
トゥビン(1905-1982)はエストニアの作曲家。優良マイナー作曲家の代名詞。同じエストニア出身である、指揮者のパーヴォ・ヤルヴィが取り上げたことから今再評価されている作曲家。全集も出てきてますし、マイナーとは言えなくなる時代が近づいてきそうです。
作風は深刻にして爆裂。金管と打楽器がとにかく激しい。第2楽章中間部の執拗なスネアドラムの使い方は天才的。ちょっと旋律が掴みにくいですが、曲の雰囲気は爆裂音楽の名にふさわしい。第3楽章終盤の、アルヴォ・ペルトを思わせる静謐な美しさにも注目。トゥビン、実に素晴らしい作曲家です。
試聴はこちら。解説はこのサイトがおススメ。
ハチャトゥリヤン:交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」
爆裂度★★★★☆
精神度★★★☆☆
隠れた名曲、ハチャトゥリヤンの3番。その爆裂度は圧倒的!冒頭のトランペット18本(!)によるファンファーレ、天から舞い降りる悪鬼のごときオルガン!ロシア革命30周年記念のために書かれた、言ってみれば革命賛美・戦争賛美の交響曲のはずなんですが、こりゃどう聴いても反戦交響曲。とにかくオルガンのトッカータが極悪、真っ赤な口の悪魔がゲタゲタ嗤ってます。
中間部は少し落ち着きますが、陰りのある民謡調の旋律。木管楽器がオルガンの音形を模倣すると、それを合図に音楽は狂気地味ていく。徐々に、徐々に、高揚していき、オルガンが再び現れる!この登場シーンはヤバイです、さながら悪の帝王。終盤は完全にネジの外れた行進曲。ほとんど躁病です。裏で蠢くオルガンが心底気持ち悪い。最後もトランペット18本の圧倒的ファンファーレ。
単一楽章形式で、23分ほど。なんでも演奏時には省略されることもあるそうですが、ほとんど録音が無いのでこれが省略なしなのかは確認しようがありません。かなりの名曲だと思うのですが、あまり広まりません。ちなみに数年前どこかの大学の吹奏楽団がコンクールでこの曲の吹奏楽編曲をやっていて驚愕しました。
推薦盤
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、黄金時代|ハチャトゥリヤン:交響曲第3番
ストコフスキ御大の素敵なオーケストレーションが堪らない一枚。というかハチャ3はこれしか出てないかもしれない。
エシュパイ:コンチェルト・グロッソ
爆裂度★★★★☆
精神度★☆☆☆☆
エシュパイ(1925-)はマリ・エル共和国生まれのロシアの作曲家。ハチャトゥリヤン、ミヤスコフスキーに支持し、JAZZや民族音楽を取り入れた取っつき易い現代音楽を多数作曲しています。バルトーク+ハチャトゥリヤン+ショスタコの変てこジャズ÷3=エシュパイ。
このコンチェルト・グロッソはトランペット・ダブルベース・ヴァイブラフォン・ピアノによる合奏協奏曲です。もろJAZZですね。ジャズバンド協奏曲と言っても過言ではない。導入からハートを鷲掴みです、マジでかっこいい!そして勿論爆裂しまくってます。JAZZかと思えばクラスター音楽っぽかったり、民謡っぽかったり、目まぐるしく音楽が展開していきます。こんなクラシックはどこを探してもありません。
…とはいえ目先のかっこよさだけな気もするので、精神度は低め。スカっとしたい時はこれです。
スヴェトラーノフ@USSR LSO
やっぱりこういうのはスヴェトラーノフ御大の演奏でなきゃならん。文句なしの爆裂っぷり。
プロコフィエフ:歌劇「炎の天使」
爆裂度★★★☆☆
精神度★★★☆☆
プロコフィエフの現代オペラ作品「炎の天使」。音楽も爆裂なのですが、演出がものすごく爆裂です。クライマックスで映画「パフューム」も真っ青の「悪魔と尼僧の乱交」が演出として要求されています。これぞアヴァンギャルド。1926年作曲の歌劇ですが、さすがに上演禁止処分を受け、作者の死後の1954年ようやく初演されました。
唯一の映像記録はゲルギエフ演奏だけなのですが、いやもう、やっちゃってくれてます。
全幕を通して全身白塗りふんどし一丁の悪魔が画面のどこかにチラリズム。
舞台の上の方で常に蠢いています。
なぜか骸骨を付けています。
クライマックスはまさに阿鼻叫喚。
逆さ吊り。
この顔はやばい!
なおこの歌劇の交響曲版が交響曲第3番です。同じ旋律素材が用いられています。演出だけじゃなく音楽もかなりいっちゃってるのでそちらもお勧め。冒頭が「タマゴクラブヒヨコクラブ」と聴こえるのでも有名(?)
推薦盤
プロコフィエフ:歌劇「炎の天使」
プロコフィエフ:歌劇「炎の天使」VHS
映像は絶版です。DVDで再版希望。うーん。
スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」
爆裂度★★★★☆
精神度★★★★★
アイヴスに次ぐ爆裂音楽界屈指の名曲。「法悦の詩」の原題は Poem of Ecstasy。エクスタシー!とはいえこの「エクスタシー」はあくまで宗教体験に近い法悦と考えられます。“官能”の中に宗教的なエクスタシーがある、というのが神秘主義の思想です。
ちなみに「法悦」の辞書的な定義は
ほうえつ ほふ― 0 【法悦】
(1)仏法を聞いたり信仰したりすることにより心に喜びを感ずること。法喜。
(2)うっとりするような深い喜び。陶酔。
「―にひたる」
このようなものです。エクスタシーと聞いてスクリャービンが即物的エロを求めたと理解するのは間違いなのです。
音楽は濃密で官能的。音楽による官能?と思うかもしれませんが、聴けば分かっていただけるかと思います。実にエロティック。徐々に、徐々にムクムクと高揚していき、終局で大爆裂。エクスタシーを表現しているそうですが、長いんですこれが。ここから見るに表現されているのは男のエクスタシーでは
ないようですね。という冗談はともかく、「法悦の詩」はあらゆる音楽の中でも群を抜いて“圧倒的”なものです。こういった法悦を感じると、なるほどベルニーニの「聖テレジアの法悦」みたいな顔になりますね。ほわー
スヴェトラーノフ@ソビエト国立響 1966
やっぱりこれでしょう。爆裂指揮者スヴェトラーノフ御大の1966年の録音。音が割れまくりですが、とにかく一聴の価値あり。爆裂とはこういうものです。他の盤との詳細な比較はこちらのサイトが詳しいです。
炸裂エロ親父、ゲルギエフの一枚。こちらはむしろ春の祭典がメインですが、法悦の詩も非常に良い演奏です。ゲルギエフの春の祭典はかなりの怪演です。お得な一枚。
他の盤に比べるとインパクトは薄いが、落ち着きのある良演。
ブーレーズおじいちゃんの法悦。なんかイメージ違いますが、遅めのテンポ設定で音のテクスチャを丁寧に生々しく実現しています。これはかなり良い。
コープランド:交響曲第3番
爆裂度★★★☆☆
精神度★★★★☆
コープランド(1900-1990)は「アメリカ音楽の創始者」とも言われる作曲家。プログレバンドEL&Pが「市民のためのファンファーレ」「ロデオ」なんかをカヴァーしているのでプログレ世代には知っている人が多いのかも。最近ではblast!も「アパラチアの春」を演奏していますね。
第3番は演奏時間45分と小品が多いコープランドの作品の中でも巨大なもの。コープランドの音楽の集大成でもあります。同じくコープランドの作品「市民のためのファンファーレ」が曲中で重要な位置を占めます。
第1楽章 Molto moderato
何かを語りかけるような木管楽器の導入。これは後に明確に姿を現す、「市民のためのファンファーレ」のメロディの変形。この楽章全体で再現されるべき主題の暗示をしています。爆裂→主題の暗示→爆裂→主題の暗示、といった形を採ります。
第2楽章 Allegro molto
ティンパニの一撃。ホルンによって提示される動機がフーガで扱われると、木管楽器によって第一主題が現われます。からかう様なおどけたフルートの合いの手が印象的。この合いの手の動機と、第一主題が自由に扱われていきます。変拍子も含み、目まぐるしく音楽は展開します。トランペットの斉奏で第一主題が高らかに歌われる。中間部では木管楽器が神秘的に絡み合い、弦楽器が幅広く主題を歌います。この雰囲気はコープランドの魅力。ピアノ、フルート、ピッツィカート、ウッドブロックによって春が芽生えると再現部。ここの導入は室内楽的で面白い。スネアが勇壮にリズムを刻むファンファーレ。
第3楽章 Andantino quasi allegretto
瞑想的なヴァイオリンの導入。第一楽章の導入主題をそぎ落としたもの。ほとんど「トリスタン」的な異様な音響。無調音楽の境に踏み入れそうで、踏み入れないこのバランス感覚は見事。
木管楽器によって一瞬哀愁を帯びるが、弦楽器の叫びによってかき消される。木管楽器が再びやわらかく歌うと、第4楽章の和音が暗示されます。おぼろげに主題が暗示されると、音楽は活動を始め、スケルツォ的な展開部へ。様々な動機・メロディが鮮やかな点描風に繰り出される美しい場面。躍動感が幸せに遠のくと再び音楽は瞑想的に。柔らかな和音で終わる。
第4楽章 Molto deliberato
ついに姿を現した「市民のためのファンファーレ」主題。「慎重に, 落ちついて deliberato」フルートによって提示されると、金管+打楽器による、原曲通りの再現を迎えます。勇壮なファンファーレ。
ファンファーレ主題の変形を伴う壮大なポリフォニー。こういった“萌芽”とも言うべき、華やかな喧騒はコープランドの特色。音楽が高まるとファンファーレが唱えられ、儚い伴奏に沿いたおやかな主題がたなびく。様子を伺うような空気が充満すると、ポリフォニーがカオスの一歩手前まで展開され、爆裂。浄化された荒野を舞う木管楽器、ささやかなファンファーレ主題の暗示。自省するようにこれまでの主題を振り返ると、ファンファーレが高らかに歌われる!ここの雰囲気は実に感動的。穏やかに歓喜のファンファーレが爆裂して曲を閉じる。
コープランドの魅力が詰まった愛すべき作品。回帰するファンファーレ主題が美しい。タムタム、ティンパニ、スネア、シンバルといった打楽器が大爆裂なのも非常によろしい。
緩急に富む、情熱的な演奏。流石のNYPO、金管の音の張りも随一。惜しいかな、終盤で金管の音程が少し気になります。
3番の録音ではこれがベストか。丁寧で分別のある味わい深い演奏。同時収録はコープランドの代表作の「市民のためのファンファーレ」「アパラチアの春」。
フサ:プラハのための音楽1968
爆裂度★★★★☆
精神度★★★★☆
フサ(1921-)はチェコ生まれのアメリカの作曲家。環境問題を取り上げた「この地球を神と崇める」など社会派作曲家として知られ、吹奏楽の世界では著名です。何を隠そうこの曲も吹奏楽。ですが侮ることなかれ、屈指の爆裂名曲です。題材は歴史的事件「プラハの春」。曲からはフサの怒りと怨念がビシバシと伝わってきます。4楽章形式で20分ほどの作品。
第1楽章
廃墟に空しく響く鳥の声。ティンパニによってフス教徒のコラール「汝ら神の戦士たち」が提示されます。スメタナの「我が祖国」でも引用されていましたね。チェコ民族のテーマソングです。しかしそのテーマも、圧倒的な「蹂躙のファンファーレ」によって破壊される。爆裂。
第2楽章
ほとんど実験音楽の世界。うごめく音響世界が生理的に嫌悪感を覚えさせます。
第3楽章
打楽器のみの楽章。ミリタリー・ドラムがマシンガンを模倣する。残酷に煌めく金属音はさながらクリスタル・ナハト。
第4楽章
スネアロールが最大音量に達すると、マシンガン音形がtuttiで爆発。ギャー!重戦車の容赦ない蹂躙。ここら辺は吹奏楽といえど物凄いです。ティンパニの先導によって冒頭のコラールが激烈に奏されると、コラールが全合奏で深刻に歌われる。爆裂。平和の鐘の残響。
管楽器特有の音圧と鋭利さを活かした名曲。ジョージ・セルが感動のあまり管弦楽編曲を依頼したというエピソードも。探せばオーケストラ演奏もあるようです。最近の軟弱な吹奏楽はこういう曲をやるべきなんですがねぇ。嘆かわしい
ハンスバーガー@イーストマン
定評のあるイーストマンの演奏。これがベスト。同時収録のコープランドの「静かな都市」が隠れた名曲。
チャイコフスキー:祝典序曲「1812年」
爆裂度★★★☆☆
精神度★☆☆☆☆
元祖爆裂音楽。ご存知大砲連発カリヨンガラガラのドンチャカ序曲です。有名な曲ですがそのバックグラウンドは意外と知られていないのかも。
そもそも「1812年」とは、ロシア軍が当時最強を誇ったナポレオン軍を見事撃退した「ボロディノの戦い」の年です。ニコライ・ルービンシュタインの依頼によって書かれた序曲です。なおチャイコフスキーは気乗りがしなかったらしく、わずか1ヶ月でこの作品を仕上げたとか。(確かに他の作品に比べて、えもいわれぬ軽薄さが漂っているような…。)
冒頭はロシア正教会の聖歌。カラヤンなど、ここを実際に合唱団を用いて聖歌を歌わせる指揮者もいます。次の場面はロシア軍の行軍、ズンチャ、ズンチャ。中盤部はボロディノの戦いを描いたもの、フランス国家「ラ・マルセイエーズ」があれよあれよと退散していきます。勝利の主題が優しく歌われ、大砲が鳴り響き、聖なる鐘とともにバンダを従えて冒頭の主題が再現。最後のおまけに大砲連発皇帝賛歌!いやーここはホントに気持ち良いですねぇ。
この曲は聴き比べが面白いですね。
ドラティ@ミネアポリス響
40年以上前の録音とは思えない、マーキュリーの技術を最大限に使った素晴らしい音質の盤。乾いた圧倒的な音量の大砲は、思わず飛び上がるほど。大音量で聴くとスピーカーと耳が壊れます。同時収録のベートーヴェン「ウェリントンの勝利」も面白い。こちらはマスケット銃。
デュトワ特有の潤った、優美な演奏。と見せかけて最後にシンセサイザーが登場します。バンダの部分も弾くもんだから物凄く奇妙な音がします…これはこれで良いかも。しかしながら流石に大砲の音は素晴らしい。大音量で聴くと部屋が震えます。
楽譜を無視して大砲と鐘が鳴りまくります。やってくれるぜストコフスキー。爆裂音楽好きには貯まりません。終結部のカットもGOOD。個人的にはこれがベスト版です。
YouTubeより小澤指揮BPO。
スメタナ:連作交響詩「我が祖国」
爆裂度★★☆☆☆
精神度★★★★★
なんで我が祖国?と思う方もいるかもしれませんが、実はコレものすごい爆裂音楽です。断じて「モルダウ小学校頃に歌ったなぁ~」「掃除の時間を思い出すなぁ」なんて程度の曲ではありません。
精神的爆裂度★★★★★。
第1曲「ヴィシェーラド Vyšehrad」
きわめて美しいハープの導入。この シ♭-ミ♭-レ-ミ♭ という主題は、のちの楽章にも登場する主要主題です。ちなみにこの主題は B - Es(S) - D - B と読め、自身の名前Bedřich Smetana(ベドルジハ・スメタナ)の頭文字を用いたものと考えられています。BACH動機、DSCH動機ばりのことをスメタナもやっていたという事実は意外と知られていない。
第2曲「ヴルタヴァ Vltava」
ご存知「モルダウ」。チェコではヴルタヴァ川と呼ばれています。言わずと知れた名曲ですね。大河のごとき幅広い旋律、きらめく水面の表現はドビュッシー、ラヴェルの先を行くもの。曲の終盤では冒頭のスメタナ主題が登場します。感動的。
ちなみにヴルタヴァ川はこんな感じ。
第3曲「シャールカ Šárka」
「シャールカ」とはチェコの伝説上の女戦士の名前。同じくチェコの作曲家ヤナーチェクも歌劇「シャールカ」を作曲しています。さしずめチェコのジャンヌダルクといったところでしょうか。
伝説の内容についてはチェコ共和国『わが祖国』紀行が詳しい。現地におもむき、写真付きで「我が祖国」の解説をしている良サイト。
第4曲「ボヘミアの牧場と森から Z českých luhů a hájů」
美しいパストラーレ楽章。ヴルタヴァ同様チェコの自然をたたえます。気持ちよさのあまりちょっと眠くなるかも知れませんが、曲の最後には後続楽章の断片が現れます。伏線の張り方が素晴らしい。
第5曲「ターボル Tábor」
ここからがクライマックス、聞き逃すことなかれ。ティンパニの先導する不穏な主題はフス教徒のコラール「汝ら神の戦士たち」が用いられています。戦いの歌ですね。ちなみにこの印象的なコラールは、チェコ音楽の中でたびたび取り上げられており、ドヴォルジャーク作曲序曲「フス教徒」、カレル・フサ作曲「1986プラハの春」などでも効果的に使用されています。この楽章で使われている旋律素材はそのほとんどが次曲「ブラニーク」で再現されます。
第6曲「ブラニーク Blaník」
前曲の興奮を引き継ぎ、強奏でコラールが歌われる!この楽章で、張られていた伏線が見事に解決していきます。音楽はコラールに基づいて展開されていきます、フス教徒の行軍でしょうか。オーボエが歌う牧歌は中断され、再び戦いが始まる。ホルンが提示する主題は前楽章でも聴かれた「英雄の主題」。英雄の主題はシンバルの打撃とともに展開される。音楽が一旦自省的になり、民族の目覚めを促す。徐々に英雄のテーマが帰ってくる、チェコ民族は決起する!
白眉はコラールが再現される部分。ここにおいて戦いのコラールは、勝利のコラールへと変貌するのです。本当に見事な和声感覚。…そしてさらにさらに!冒頭のスメタナ主題が感動的に再現されます。ここでくるかッ!
音楽は喜びに満ちて大団円。こんな曲があるチェコがとてもうらやましい。
民族意識を喚起させる素晴らしい精神的爆裂。加えて巧みな構成。打楽器奏者的にはティンパニとシンバルの使い方も◎。ここまでシンバルが鳴らされる曲ってあんまりないです。
クーベリック@チェコフィル
1990年の「プラハの春」オープニングコンサートでの歴史的名演。クーベリックはこの曲を振るために42年ぶりに祖国チェコへ帰国しました。万感の思いが終楽章で炸裂します。ここの箇所はどの盤よりも感動的。
カバレフスキ:ピアノ協奏曲第4番
爆裂度★★★☆☆
精神度★★☆☆☆
プロコフィエフをもっと明るくライトにしたような局長。子供のでたらめな歌のようなへんてこメロディの数々も良い。カバレフスキは天才的なメロディメーカーです。
第3楽章はスネアドラム奏者必聴。ほとんどマシンガンのごとき連打。カバレフスキは太鼓の使い方も面白い。
第3楽章。マシンガン。
カバレフスキ@MPO
自作自演。ピアノ協奏曲2番、3番、4番が収録されています。スピード感溢れる演奏でお勧め。カバレフスキはプロコフィエフが好きなら絶対にハマります。
ブライアン:交響曲第1番「ゴシック」
爆裂度★★☆☆☆
精神度★★☆☆☆?
演奏時間114分!もっとも長い交響曲としてギネスに認定されています。ハヴァーガル・ブライアン(William (Havergal) Brian)はイギリスの作曲家。32曲の交響曲を残してますが、残念ながら録音があるのはこの1番を含めわずかです。作風は映画音楽風。この「ゴシック」も霊感に富む部分はあるものの、ちょっと凝った映画音楽といった作風。後半の合唱はかなり爆裂してます。合唱付き交響曲が好きなら聞いておいて損はない作品。聴き込めば奥が深そうなんですが、いかんせんちょっと飽きる。
Lenard@スロバキアフィル
NAXOS盤。音質も良く、演奏も良好。他の録音は手に入りにくいのでこれが良いでしょう。
ニールセン:交響曲第5番
爆裂度★★★★★
精神度★★★★☆
ニールセンの作品で最も完成度が高いとされる作品。高度に複調的な書法で書かれています。
この曲の目玉はやはり、打楽器奏者垂涎のカデンツァを含むスネアドラムソロ。打楽器奏者としては、もうよだれで溺れそうです。ニールセンは打楽器の使い方がホントにすごい。ニールセンの打楽器書法には、ショスタコーヴィチが大きな影響を受けているそうです。言われてみれば使い方が似ています。
曲は全2楽章構成で、約35分。なお以下の第一部、第二部などの分類は理解のための便宜的なものです。
第1楽章 Tempo giusto(第一部)
執拗に上下運動を繰り返す、波線のような動機がヴィオラに出る。ファゴットによる、牧歌的ながらも異様な序唱。弦で流れるような主題が現われます。しかし茫洋と空気を漂うように、音楽は前進することがありません。
トライアングルが軍楽ドラムを呼び起こすと、音楽は重圧を伴い進み始める。反戦交響曲のような印象を抱きます。主題は上下運動を含んでいます。木管が風のような空気を醸し出す。タンバリン、トライアングルの目覚しい異化効果。スネアドラムが無慈悲にTempo
giustoで歩みを進める。 ティンパニのトレモロに乗せて上下動機が提示され危機的な雰囲気になると、クラリネットのカデンツァ。木管によってようやく調性的な主題が漠然と示されるが、タンバリンの孤独な響きにかき消されてしまう。
第1楽章 cont, Adagio non troppo(第二部)
一転してオーボエの合図で豊かで幅広い、退廃的な主題が歌われる。一旦主題に影が落ちると、上下動機が割り込むようにからみ付く、新たな歌いだしとなる。カオスの様相を帯びてくると、突如軍楽風のリズムのスネアドラムが「テンポを無視して」飛び込んでくる。トランペットにも軍楽リズムが感染します。圧倒的な膨脹。ここのスネアドラムソロはあらゆる西洋音楽の中で、群を抜いて圧倒的・威圧的なもの。これぞ太鼓です。交響曲中にカデンツァの指定がある太鼓ソロなんて他に無いです(あったら是非教えてください)。ティンパニ、スネアのロールに導かれて雄大に調性の解決が図られる。上下動機がまとわりつき、一瞬調性が揺らぐが、スネアドラムの爽やかなロールを伴い、音楽は今度こそ調性的に解決する。クラリネット、スネアドラムの二重奏が回顧するようにもの静かに語り、ディミニュエンドして終わる。
第2楽章(第一部) Allegro - Un poco piu mosso
波のような先の読めない主題。様々な動機を巻き込み、複調的に展開されていきます。第1楽章第二部のオーボエの導入動機が繰り返されると。祝祭的な雰囲気の高揚…突然の金管の警告音!動揺するように音楽はざわめきの中へ。主題が複調的に覆いかぶさり、コラージュ音楽の様相を帯びる。動揺していた弦が突如方向性を定めて暴れだし、主題が明確に再現され展開される。不気味に弦が再び蠢き始めると、第1楽章で暗示されていた同音連打動機がトランペットと弦に現われる。
第2楽章(第二部) cont, Presto
3拍子に乗って透明感のある弦が影のように踊る。ファゴットが卑俗に旋律を重ねると、突然のティンパニの強打。クラリネットの浮遊霊が飛び回り、狂気を孕みつつ展開される。ティンパニが炸裂し、フルートが怪しく残る。スケルツォ的な性格がありますね。
第2楽章(第三部) cont, Andante un poco tranquillo
第1楽章第一部で提示された動機が、旋律としてポリフォニックに紡がれる。無調の領域に足を踏み入れつつも、煌めくような調性の美しさを感じさせます。北欧音楽特有の冷気を感じさせます。金管が割り込んでくると、切れ目無くフィナーレの再現部へ。
第2楽章(第四部) cont, Allegro
第2楽章第一部が回帰します。ソナタ形式で言う再現部にあたる箇所でしょう。一通り圧縮されて再現されると、コーダ部へ。音楽が激烈に短調で煽られていくと、ついにティンパニのト音(ソ)の連打が確固たる長調を確立する。長大なト音のクレッシェンドで曲を閉じる。
この曲の調性に関しては「エスパンシーヴァ・ニールセン」さんが愛を持って興味深い解説を載せております。ご一読あれ。
コンドラシン@RCO
超ど級爆裂スネア!これが最強でしょう。リムショットがたまらん。ライブ版ですが、演奏は膨脹感のある素晴らしいもの。ベスト。同時収録がショス6というのも、タコとニールセンの類似性を示唆する見事な選曲。スネアドラムに同じリズムが出てきます。
スネアが好演。“不滅”も収録してありますし、演奏も整っていて聴きやすいのでニールセン入門にはこれがベスト。
ロパルツ:交響曲第3番
爆裂度★☆☆☆☆
精神度★★★☆☆
ロパルツ(1864-1955)はフランスの作曲家。現代的な書法には手を染めず、生涯を通じて後期ロマン派の様式を貫きました。生涯で作曲した5つの交響曲の中で、傑作とされているのがこの第3番。合唱付きの壮大な交響曲です。輸入盤にはテキストが無いので詳しくは分かりませんが、歌詞の内容はロパルツ自作の自然や愛を讃えるものだそうです。
全曲を通して明るいエネルギーに満ちた劇的な交響曲。第3楽章冒頭の瞑想的な4重唱はため息が出る美しさ。終盤はあでやかな賛歌の大合唱。人間万歳!といった作風。爆裂度は低いですが、合唱付き交響曲の中ではかなりの名作。
プラッソン@トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団
これしか出てないかも知れません。瑕の無い好演です。強いて言えば合唱をもっと大音量で聴きたい。
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
爆裂度★★★★☆
精神度★★★☆☆
ストラヴィンスキーのぶっ飛びバレエ音楽。「春の祭典」なんていうとパカパカーン!と明るい雰囲気を想像しますが、ここでの祭典は「いけにえの儀式」を伴う、土俗的な祭典。非常に革新的な書法で書かれており、初演時には大ブーイングが飛び交ったという逸話が残されています。
バレエの実演では演出が見所。動画はありませんが、騎乗バレエ団「ジンガロ」の演出は実に見事。馬の肉体美が織り成す幻想バレエ、必見です。
プレルジョカージュ
ピナ・バウシュ
ファジル・サイの自動ピアノを用いた4手編曲。
変拍子、不協和音、主にアフリカの民族音楽の要素として知られる「ポリリズム」などの作曲技法が用いられています。曲の難易度は数あるクラシック音楽の中でも最高峰。ポリリズムは打楽器奏者泣かせ。出来るかっ。
ブーレーズ@クリーヴランド
名盤中の名盤。音のテクスチャが完璧に表現されています。
怒涛の「ハルサイ」。アンサンブルの多少の乱れなど気にせず猛進します。終結部の断末魔はこれがベスト。
メシアン:トゥーランガリーラ交響曲
爆裂度★★★★☆
精神度★★★★☆
現代音楽の作曲家メシアン(1908-1992)の交響曲作品。メシアンは共感覚(音から色彩を感じることが出来る能力)の持ち主であり、この作品も実に色彩感豊かなものになっています。インド音楽の影響も大きく受けた作曲家で、その理論(ラーガ、ターラ)も交響曲の中で取り入れています。タイトルの「Turangalîla」もサンスクリット語由来の造語。かなり幅広い概念の言葉なので一義的には言えませんが、一例として「愛の歌」のような意味を持つようです。ガムラン音楽の影響も強く、浮き立つ金属打楽器は存分に異化効果を発揮します。ペルシャ音楽由来の微分音も使われています。このように東洋趣味が色濃いですが、メシアンはそれらを完全に消化して自分の語法の中に取り入れているので、まったく――しばしば東洋趣味の作曲家に見られるような――”オリエンタリズム的なもの”を感じさせません。
オンド・マルトノという神秘的な楽器を使用していることでも有名。オンドは根強い人気を誇る楽器で、Radioheadなどのロックバンドや環境音楽などのようなジャンルでもしばしば使われます。
オンド・マルトノ
ご覧のようにとても美しい外見を持つ楽器です。レプリカで良いからインテリアとして欲しい。
オンド・マルトノの宇宙的な音に加え、調性音楽に慣れた耳にとっては、ほとんど荒唐無稽な和音とリズム。言語を絶する交響的宇宙。大変結構な爆裂です。
の10曲からなっています。第5楽章はN響アワーのオープニングでも使われていたので聞き覚えのある人もいるかも。第5楽章とフィナーレがブッ飛んでます。フィナーレのオンド・マルトノに陶酔。
第5楽章へのリンク
http://www.youtube.com/watch?v=Tv67YkOWJNA
オンド・マルトノの紹介ビデオ
オンド・マルトノ演奏動画(後半はテルミン)
シャイー@RCO
演奏によっては肝心のオンドがあまり聴こえないことがあるのですが、この盤ではその心配はありません。オンド・マルトノは日本が誇るオンド奏者、原田節。