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音楽は戦いだ〜 バッハ:シャコンヌ
意外と知られていませんが、音楽の技術というものは日々向上しています。発表当時にオーケストラが技術的に出来なかった曲というものは実は結構な数があり、マーラーの諸作や「春の祭典」、さらに昔はモーツァルトの「魔笛」ですら演奏できなかった時代もあるそうです。(演奏不可能な作品 - Wikipedia)
言い換えれば、音楽の歴史は作曲者と演奏家の戦いの歴史でもあるわけです。作曲家が新しい表現を提起し、演奏家が実践する。その繰り返しが、クラシックからポップスにいたるまでの現在の豊富な音楽界の下地にあるわけです。
無論そういった“戦い”は現在でも続けられています。ほんの一例をあげればクセナキスの諸作などはほとんど修行。含蓄に富むビデオ。
ヘルマ (高橋悠治演奏)
「試されない人生は生きるに値しない」
高橋悠治の言うように音楽は、書道、剣道、柔道などに通じるような“道”を追求する、戦いなのです。偉大な困難に立ち向かう姿、それを成し遂げる姿は見るものに勇気と感動を与えます。音楽にはスポーツの感動に非常に近い側面があるのです。
そういった意味で、バッハの「シャコンヌ」はクセナキスに引けをとらない、偉大な困難。バッハの通称「シャコンヌ」は「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ第2番」という曲集の中の一曲。非常な難曲で、全ての弦をフル活用し、中間部は3人で演奏しているようにすら聴こえます。その完璧な完成度で多くの演奏家を魅了する名曲中の名曲。バッハの要求する完璧な音の羅列!それを演奏家は的確に、自身の理想通りに処理していかなければならないのです。“無伴奏”ゆえに失敗の言い訳は許されない。試されているのは自分独り。自身の培った音楽感性を、一糸纏わぬ姿で曝け出さなければならない。それは演奏家にとって無上の至福でもある一方、恐怖でもあります。これぞまさに戦いの音楽。
スポーツの感動を言葉で伝えるのが難しいように、この音楽を言葉で語ることは難しい。以下に動画を用意したので是非聴いてみてください。楽譜(pdf)もご一緒に是非。
若手の演奏家がmp3で公開しています。
・Gwendolyn Masin
・Viviane Hagner(上から3つ目)
・Dante Rosati(ギター編曲)
以下はYouTubeより。
ミルステインの演奏。
ハイフェッツの演奏。
メニューインの演奏。
Emil Telmanyiの演奏。
若手ヴァイオリン奏者、Tymur Melnykの演奏。
プレトネフピアノ演奏、楽譜つき。
ファジル・サイによるブゾーニ編曲のピアノ演奏。
Mika Vayrynen の素晴らしいバンドネオンによる演奏。神々しい。
セゴビアのギター演奏。苦悩に満ちていて美しい。
アムランの演奏。余裕!
村治佳織のギター演奏。
ご覧のように様々な編曲があることでも有名。シャコンヌ同好会さんで編曲を確認する限り、30種類以上の編曲が存在する模様。おそらくもっとあるのでしょう。
シャコンヌとは「タンゴ」「ワルツ」のように、舞曲の形式を指す一般名詞です。他の作曲家も多数シャコンヌを作曲しています。名曲が多いのですが、中でもヴィターリのシャコンヌがバッハに次いで素晴らしい。
サラ・チャンの演奏。
オルガン伴奏でハイフェッツの演奏。
あぁぁ素晴らしい。音楽の素晴らしさを体感出来ますね。