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爆裂音楽名曲集


昔好きだったサイトに、爆裂する音楽をひたすら紹介する「爆裂音楽」というサイトがありました。オマージュの意を込めて爆裂音楽を紹介してみたいと思います。


ヴァレーズ:イオニザシオン《電離》
爆裂度★★★★☆
精神度★☆☆☆☆


 傑作爆裂音楽「アメリカ(Ameriques)」でも知られる、エドガー・ヴァレーズの打楽器アンサンブル曲。打楽器音楽なのでピンと来ない方も多いかも知れませんが、クセになるリズムと多用な音色の使い分けが麻薬的な名曲です。あくまで管弦楽の“足し”に過ぎなかった打楽器に、新たな光を当てた最初の曲だと言われます。電離というタイトルはそういう意味、すなわち「音楽概念の転換」という意味で付けられているとか。

ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンテンポラン






 騒音主義というスタンスで語られるヴァレーズはたくさんの爆裂音楽を残しています。そんな彼の作品の中でも最強の爆裂音楽は「アメリカ」でしょう(YouTubeにはありませんが…)。ブーレーズ指揮シカゴ響で良い盤が出ているのでそちらがオススメです。



ボーズヴィーク:Fnugg
爆裂度★★★☆☆
精神度★☆☆☆☆


 ノルウェー出身、新進気鋭のチューバ奏者、オイスタイン・ボーズヴィーク(Øystein Baadsvik)の小品。なんて楽しいんでしょう、いやはやこれがチューバですか!Fnuggはノルウェー語で「小品」の意味。アボリジニの楽器、ディジュリドゥーにインスパイアされてこの奏法を思いついたとか。なるほどちょっとディジュっぽいです。





シュールホフ:ソナタ・エロティカ
爆裂度★★★★★
精神度☆☆☆☆☆








 爆(笑して腹が)裂けそうという意味で爆裂。またはあまりの馬鹿馬鹿しさに脳みそが爆裂してしまうという意味で爆裂。YouTubeに動画が上げられたのでマイナークラシックから爆裂音楽へ引越しです。
 作曲はエルヴィン・シュルホフ(1894-1942)。シュルホフはチェコの作曲家です。ドイツにおいて前衛芸術家として活躍しましたが、ナチスに「退廃芸術」烙印を押され、戦火を逃れるも逮捕され、強制収容所で死去しています。
 まぁ何はともあれ動画を観てください。絶句です。そりゃあんた「退廃芸術」って言われても仕方ありません。終盤は軽いスカトロフォビア
 「ソナタ・エロティカ」はこのような荒唐無稽な作品ですが、シュルホフは紛れもなく一流の作曲家です。重厚ながらも退廃的で皮肉めいている交響曲作品、JAZZの書法を活かした「ホット・ソナタ」や「交響曲第3番」などは今聞いてもイカした作品。


ペルト:タブラ・ラサ
爆裂度★★★☆☆
精神度★★★★☆


 アルヴォ・ペルトはエストニアの作曲家。東方教会系の旋法を用いた、宗教的で静謐な作風です。現代に生きるクラシック作曲家の中で最も評価の高い一人です。
 タブラ・ラサは25分ほどの弦楽合奏曲。鐘の音のようなプリペアド・ピアノも効果的に使われています。静謐で、かつ爆裂という稀有な作品。現代クラシックの傑作中の傑作です。現代音楽にありがちなワケワカラン音楽ではないので、音楽に詳しくない方も直感的に楽しむことができるでしょう。オススメはマンフレード・アイヒャーのプロデュース盤。ギドン・クレーメルとキース・ジャレットが共演してます。素晴らしすぎる演奏です。

曲の流れは編集されていますが、タブラ・ラサでコンテンポラリー・バレエを踊っている動画。素晴らしい出来です。



ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
爆裂度★★★★☆
精神度★★☆☆☆


 スターリンの死、「雪どけ」を待って発表された、ショスタコーヴィチ会心の一作。自身の名を用いたモノグラム、DSCH音型Dmitrii SCHostakowitch)が登場します。5番、7番と聴いたら次はこれでしょう。

第1楽章



 低弦の序奏では、後にDSCH(レ - レ♭- ド - シ)に発展する、DとEsの音が暗示されています。忍び寄るような半音が堪らない。概ね緩-急-緩の構造に従い、中間部分ではスネアドラムも加わりいかにもショスタコ的なドラマティックな展開を見せます。

第2楽章

 楽しそうなデュダメルに注目。熱い!

 やっぱりこの楽章でしょう!爆裂度★★★★★。4分ほどの楽章ですが、彼の天才が如実に感じられる作品となっています。見事な構成、リズムセンスに脱帽。遅刻しそうな時はこれです。
 一説によればこの楽章はスターリンの音楽的ポートレイトとして作曲されたものだそうです。スターリン怖すぎですね。

第3楽章

 ここまでで仄めかされ続けてきたDSCH音型が、ついにその真の姿を現しますDSCHが連打される終盤は圧倒的です。
 興味深いのはマーラーの「大地の歌」へのオマージュが捧げられている、という話。ショスタコーヴィチは、意外とマーラーの影響を受けているのかも知れません。言われて見ればシニカルなところは通じるものがあるような。ちなみにショスタコーヴィチのスネアドラムの使い方は、ニールセンに影響を受けているなんて話も聴いたことがあります。

第4楽章

 重苦しい空気の中を不気味な旋律が舞うアンダンテ部。そして同じ材料を見事に引継ぎ、一転して明るいアレグロへ移行します。このアレグロ部分に見られるような「一体どこへ向かうか分からない展開」は、ショスタコ音楽の中毒性の源泉ではないでしょうか。徐々に徐々に高揚しつつ、スネアドラム、シンバルが加わり音楽に方向性が与えられると、DSCH音型がトゥッティで大爆発!ドジュワワァァァーンとゴングが雄たけびを上げます。通学・通勤中に聴いている時、思わずニヤニヤしてしまっていることに気付いて、ハッと表情を引き締めなおす箇所です。
 大爆発の後は、今までの旋律素材を振り返りながら狂ったように展開されます。終局に向けて各パートでDSCHが連呼されますが、特にホルンの異様な信号音は凄まじい。こんな使い方が出来る作曲家はショスタコーヴィチぐらいでしょう。打楽器奏者的にはラストのティンパニの連打に涎垂れ流しです。


オススメのディスクはムラヴィンスキーのライブ盤。姿勢を正したくなる厳格な演奏です。


バーンスタイン:ウェストサイド物語より「シンフォニック・ダンス」
爆裂度★★★☆☆
精神度★☆☆☆☆


 ご存知指揮者のバーンスタインは、実は「ウェストサイド物語」の作曲者でもあったりします。ジャズのエッセンスをふんだんに取り入れた、もう文句なしに楽しく美しい音楽。
 20分弱の作品なので、お忙しい方は2つ目の動画からどうぞ。マンボ!






 ちなみにバーンスタンは交響曲も書いています。 第1番『エレミア』 第2番『不安の時代』(ピアノと管弦楽のための) 第3番『カディッシュ』(管弦楽、混声合唱、少年合唱、話者とソプラノ独唱のための)の3曲が残されています。副題からも分かるように、このウェストサイド物語とは全く趣の違う、宗教的で多面的な作品です。録音される機会に恵まれない作品ですが、バーンスタインを知る良い手がかりとなる作品ですので興味がある方は是非どうぞ。自作自演全集が発売されています。


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