クラシック入門夢十夜 第一夜~理屈抜きで美しい音楽


 第一夜では直感的に美しさを感じることが出来る音楽を紹介。理屈は要りません、クラシック以外の音楽ではなかなか味わうことの出来ない、音律の美しさを堪能してください。



アッレグリ:ミゼレレ
 まず最初は私が最も美しい音楽だと信じている、アッレグリのミゼレレです。アッレグリ(1582-1652)はルネサンス期に活躍した宗教音楽家。この「ミゼレレ」も「神よ、わたしを憐れんでください(Miserere mei,Deus,)」という歌詞から始まる宗教音楽です。
 宗教音楽と言ってもなんら難しいことはなく、この胸を締め付けるような、正直で感情的な旋律にただひたすら酔いしれましょう。歌詞について知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。
 クラシック Classic はその名の通り、時代の重みに耐えてきた古い音楽です。このミゼレレの旋律は実に400年もの時間に耐えてきたのです。そう考えると感動もひとしおではないでしょうか。それにしても、モーツァルトも聴いたこの音楽を、こうしてディスプレイの前で鑑賞できることはこの時代に生まれた我々の大きな特権です。ありがたく利用しましょう。







ヴィターリ:シャコンヌ
 時代は少し進んで、ヴィターリ(1663~1745)はバロック期の作曲家。バロック時代はバッハ(1685-1750)の活躍した時代としても有名ですね。この時代にはヴァイオリンやピアノといった器楽が発展し、様々な器楽曲が生み出されました。このヴィターリのシャコンヌもヴァイオリンのために書かれた曲です。情熱的で切なく甘美、これほど情感に溢れた音楽はあまりありません。
 ちなみにこの曲は実はヴィターリの作ではないというのが現在一般的な説。かと言ってヴィターリの他の作品はほとんど残っていないのが現状。ヴィターリは天国でさぞ微妙な気持ちでしょう。

ハイフェッツ(ヴァイオリン)の演奏。伴奏は神々しいオルガンが務めています。


(動画が消えているときは「Vitali Chaconne」で検索すれば見つかります)



シューマン:トロイメライ
 シューマン(1810-1856)はロマン派を代表するドイツの作曲家。トロイメライはドイツ語で「夢心地」という意味です。演奏は歴史的なピアニストとして名高いホロヴィッツ(1903-1989)。この動画は1986年のものですから、実に御歳83歳!繊細な音色のコントロール、抑えられた表現は見事。音楽は言葉よりも直裁に感動を伝えることが出来るのです。この観客の表情と言ったら…。







バッハ:ゴールドベルク変奏曲
 バロック音楽の代表格、バッハ(1685-1750)の名曲をここで。50分近い長めのピアノ独奏用変奏曲なので初心者向けとは言いがたいですが、全部聴き通さずとも、究極最初と最後のアリアだけでも曲の魅力は十分に伝わってきます。クラシックが敬遠される理由としてその長大さも挙げられると思いますが、別に全部一度に聴く必要はないんです。鑑賞する時は必ず聴き通すというクラシックファンの方が少数に感じます。音楽鑑賞は娯楽です、苦行ではありません。長大な交響曲やオペラを鑑賞する際には、まずは好きな部分・有名な部分を楽しんで、それから徐々に残りを聴き進めていくようにするのが、作品の全容を楽しむための一番の近道です。
 演奏は奇人・グレン・グールド。彼の本人のハミングが聴こえてきますがそれもまたご愛嬌。この演奏は彼の死の前年に録音されたもので、「ゴールドベルク変奏曲」の最高の演奏とされています。
 最初にアリア主題が提示され、その主題が次々と自由に形を変えて変奏されていきます。そして第30変奏まで終えると、再び冒頭のアリア主題(Aria da capo)が演奏されます。初めての方はアリア、第30変奏、アリア・ダ・カーポの3曲から初めてみるのが良いでしょう。

(02:53までが最初のアリア)

(動画が消えているときは「goldberg gould」で検索すれば見つかるでしょう)


 グールドの演奏する2度目のアリア主題は本当に素晴らしいです。演奏からは死に対する諦念、世俗的な感情を超越した何かが伝わってくるようです。私はもう4小節ほどで必ず涙してしまいます。


第30変奏(04:19~)からの観賞がオススメ。




 これらの音楽を美しいと感じない人間はいないと思います。ひとまずクラシックが微塵も難解ではないことが分かっていただけたでしょうか。
 しかしここで重要かつ喜ぶべきことは、これらの音楽は、音楽の知識があるとなんとさらに楽しめるということです。しかもその知識は、音楽を楽しんでいるうちに自然と獲得出来るものです。十夜を一巡したあとに、再び聴いてみると新たな感動があるかも知れません。




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