クラシック入門夢十夜 第三夜~“交響曲”入門


 数あるクラシックの演奏形態のうち、もっとも大規模で表現力豊かな「交響曲」の入門編です。メニューはドヴォルザーク第9番、チャイコフスキー第4番、ブラームス第1番。




ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」より第4楽章
 と、言いつつも「交響曲」の定義は意外と恣意的で曖昧です。まぁここでは細かいことは言わず、“『交響曲』と銘打たれた、比較的大規模な編成で複数の楽章から構成されている楽曲”を「交響曲」としましょう。
 交響曲の入門に相応しい第一曲目は、ご存知「ジョーズのテーマ」、ではなくドヴォルザーク作曲の、交響曲第9番「新世界より」より第4楽章。「より」が重なっていますが、タイプミスではありません。この曲はチェコ出身の作曲家であるドヴォルザーク(1841-1904)が、仕事でアメリカに滞在していた時に作られた曲です。「新世界(アメリカ)より(故郷チェコに向けて)」という意味が込められています。
 ちなみに第2楽章は「家路」のメロディとしても親しまれています(こちらの動画で聴けます)。思わず帰路につきたくなってしまう影の国民的メロディとなっていますね。
 ドヴォルザークは第8番も入門にふさわしい傑作です。8番、9番がセットで収録されているメータ盤(1,000\)が一枚目に相応しいでしょう。

 



チャイコフスキー:交響曲第4番より第4楽章
 チャイコフスキーの交響曲は入門にオススメ。後期3部作とも言われる第4,5,6番は文句なしの傑作です。
 この第4番第4楽章はオーケストラのアンサンブル力が問われる難曲としても有名です。見事に絡み合う高速パッセージは聴きどころ。終わり方もいかにも交響曲的で大変気持ちいい。
 名盤は断然ムラヴィンスキー盤恐怖の指揮者・ムラヴィンスキー(ニコニコ動画へ)と、ほとんど軍隊・レニングラード響が圧倒的なアンサンブルを聴かせてくれます。練習辛かったろうなぁ…。

 

ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1340935



ブラームス:交響曲第1番より第1楽章
 ブラームスはロマン派を代表する作曲家の一人。完ぺき主義者であったブラームスはこの1番を完成させるのに20年かかったとか。「ベートーヴェンの第10番」と言われるほどの完成度を誇る傑作です。この曲の冒頭は本当に素晴らしいものです。交錯する感情的な旋律と、無慈悲にリズムを刻み続けるティンパニの見事で危うい調和。崩壊寸前の美。

マーク・ウィグルスワース&ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1428590
ニコニコ動画は敬遠される方も多いですが、クラシックに関してはYouTubeより消されにくく、そして高音質なので未登録の方は是非この機会にどうぞ。


未登録の方はYouTubeでどうぞ。
 


第4楽章も傑作中の傑作。ベートーヴェン「歓喜の歌」へのオマージュと思われる旋律が登場します。下の動画だと4:45あたりから始まります。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1355595(ニコニコ動画)

 ちなみにこの旋律には面白いエピソードがありまして…ブラームスを崇拝していたハンス・ロットという作曲家は自身の交響曲の中で、ブラームスのこの旋律を、さらにオマージュした旋律を作曲しました。若きロットは、ブラームスも審査員である作曲コンクールにその交響曲を提出するのですが、なんと当のブラームスからコテンパンにこき下ろされてしまいました。失意のロットはそのまま精神を病み、数年後、自殺という形で人生を自ら絶ってしまいました。

 ロットの自殺に大きな衝撃を受けたのが、かのマーラー。マーラーとロットは共に作曲を勉強した学友で、とても親しい間柄だったんです。加えてマーラーは音楽面でもロットに好感情を抱いていたようで、「交響曲第1番を作曲する際にロットの交響曲を参考にした」と語っているほど。

 そんなマーラーは交響曲第3番の冒頭で、何故か、ロットがオマージュを捧げたブラームスの旋律に似た旋律を、ホルン8本という強烈な編成で堂々と配置しました。どうして(間接的にですが)親友を殺したブラームスの旋律を使ったのかは、未だ解明されていませんが、一説によると、ロットをこき下ろしたブラームスに代表される旧制アカデミズムへの批判が込められているそうです。そんなことを考えながら音楽を聴くと、また味わいもひとしお。




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