クラシック入門夢十夜 第四夜~“ピアノ音楽”入門


 ピアノ音楽には優れた作品が多いですが、ピアノを弾いたことがないとちょっと手を出しにくいジャンルかもしれません。このページではピアノを使った作品に焦点を当てて紹介します。




プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番“戦争ソナタ”より第3楽章
 「戦争ソナタ」というなんとも物々しい副題が付いている、プロコフィエフの傑作ピアノソナタ。第二次世界大戦中に作曲されたためこのような名前が付いています。
 この曲のスピード感はもはやロック。ピアノ音楽と言うとお上品~な印象を持ちますが、いやはやこんな作品もあるんです。

13歳!素晴らしい才能です。


 おまけに超絶技巧ピアニスト、ものごっついピアニスト、シプリアン・カツァリスの演奏。これは極端な例ですが、奏者によって作品の印象はこれほどまでに変わります。
 


ラヴェル:水の戯れ
 印象派音楽の傑作中の傑作。中学校の音楽の授業で聴いて大変な感銘を受けたことを強く覚えています。眼前にきらめく噴水がまざまざと。音楽表現の無限の可能性を確信させる一曲です。





ドビュッシー:月の光
 同じく印象派の作曲家として名高いドビュッシーの一曲。優しく輝く旋律が魅力的な名曲です。
 演奏を可視化した面白い動画です。お楽しみください。





ジェフスキ:ウィンスボロ綿工場のブルース
 ここで一曲、現代の作品を。ジェフスキは“社会派”作曲家で、チリの革命歌を題材にした「不屈の民」変奏曲という作品が有名です。(動画はこちら。情熱的な主題!最初の1分半で名曲と分かります。)
 この「ウィンスボロ綿工場のブルース」もやはり社会派音楽で、南部アメリカ、1934年の大農民ストライキの際に歌われたブルースが題材になっています原曲?はこちら)。聴きどころはこのブルース旋律の扱われ方。明と暗の二重構造がすさまじい狂気を演出します。
 ひじまで使って鍵盤を叩く、地響きのような導入。不穏な低音の上に、南部アメリカの陽気なブルースが断片のように現われます(04:00周辺)。ブルースは不協和音によって無残に変容され、崩壊します(05:15~)。廃墟に悲しくJAZZYな旋律が響くと、再び音楽は交錯していきます(07:30)。抗うように奏でられていたブルースは、唐突に断絶されてしまいます(09:00)。後に残るは鋭利なガラスの破片のようなきらめきだけ…。
 しかしまぁ、先ほどの「月の光」と同じ楽器とはとても思えません。音楽の“表現の幅”はこのように大変広いものです。





クセナキス:ヘルマ
 世界で一番難しい曲を作曲すると言われる、ヤニス・クセナキスの作品。演奏は日本が誇る天才音楽家、高橋悠治。
 ちょっとピアノ音楽の紹介としては相応しくない、つまり、聴いてる方としてはこんなもん全く面白くない訳ですが、この動画の中で語られている「音楽とは戦うこと」というのは大変示唆に富む言葉だと思うんですね。
 実際に音楽の練習・演奏をしたことがない方には、意外と思い及ばないことかも知れませんが、音楽演奏においては剣道や柔道や茶道に通じるような、“道”を極めるという要素がかなりの比重で存在します。演奏家である以上、大なり小なり音楽の道を追求しようという心構えがあって、その発露として彼らの作品があるのです。抽象的な話ですが、そう言った点、演奏家の職人魂・プロ気質・求道者精神のようなものに注目して音楽を聴くと、また違ったものが見えてくることが多々あります。
 クラシック音楽はPOPSやロックと比較すると、より職人的な要素が強いと言えるでしょう。発露としての作品そのものだけでなく、その職人とそれに至る努力に対して感動し、賞賛することもまた、クラシック音楽鑑賞の一つの楽しみです。




シューマン:トロイメライ
 最後の一曲は第一夜でも紹介した、ロマン派の作曲家、シューマンの傑作小品。部屋を暗くして、目を閉じてお聴きください。音楽の力を体感することが出来るでしょう。また前述のように、演奏しているホロヴィッツ自身に思いを馳せて聴くのも良いでしょう。御歳83歳…言葉よりも雄弁に、語っています。
 作品の解説はこちらが詳しい。大変深く考察されていて、相当の音楽の知識がないと理解できないと思われますが、2分ちょっとのこの作品に秘められた奥深さを知る、という意味で是非ご覧ください。






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