幸せなおなか~グルメ紀行

 食の感動は、芸術の感動に勝るとも劣らない。幸福になれる感動グルメをご紹介。


究極のかき氷『埜庵』(神奈川県藤沢市)





 かき氷の名店として名高い、埼玉県秩父の『阿左美冷蔵』と同じクオリティのかき氷が食べられるお店が、神奈川県藤沢市鵠沼海岸駅に存在します。かき氷なんぞ大して変わらんだろう、そう考えていた時期が私にもありました。しかし『阿左美冷蔵』、またこの『埜庵』のかき氷は、私の安直な「かき氷大したことない説」を一口ごとに、文字通り、氷解する力を持っていました。これは「かき氷」なんて言葉で括られるべき食べ物ではなく、いっそ「神氷(かみごおり)」とでも呼ぶべきだと一口ごとに、文字通り、一片氷心、氷のように透き通った心で確信するのでありました。
 味の秘密は長瀞の「天然氷」。製氷機で作るわけではないので収穫量もまちまちで、管理・輸送も難しい。加えて温暖化で年々量も減っているとか…。こちらのかき氷は一杯500円~800円というちょっと挑戦的な値段設定なんですが、そんな話を聞くと、むしろかなり安いんじゃないかと信じてしまう素直さはかき氷を食べたからでしょうか。他では味わうことの出来ない貴重な味です。

 といっても一人で行くのは寂しいので、大船在住の友人を引き連れて来店。徒歩1分とだけあってかなり近い。鵠沼海岸駅は文字通り海に臨む町で、ほんのりと薫る海風がとても心地よい。
 平日の午後1時に行ったこともあり比較的空いていました。魅力的なメニュー群に数分戸惑うも、どれでも美味いだろうということでサクっと注文。今回は山柚子(800円)と宇治金時(800円)を注文。
 待つこと3分、悠然とそびえる氷山のようなかき氷がいそいそと運ばれてきました。さぁ、精神統一をして、いざ戴きます。

 山柚子


 宇治金時


 口に入れた瞬間にシャワアと溶けて、スーッと喉を潤し、清流のように食道を滑り落ち、晴天に火照った優しく冷やす。この間約3秒。
 柚子は甘すぎず渋すぎず、絶妙な味わい。つぶつぶ果肉が新鮮な食感でした。宇治金時はご覧のように本格的な抹茶がかかっており、単体ではしっかりと苦い。しかし練乳をかけるとこれまた絶妙のほろ甘さ。掘り進むと小豆が現われ、嬉しいことに甘さの風合いが変わります。“甘さ”主題の変奏、うーん、音楽的ですらあります。

 まさかかき氷でこんなに感動するとは思っていませんでした。食の感動はかくも深き。しかしこのかき氷の感動は、文字通り、氷山の一角なんでしょう。食の喜びを追求しようと改めて決心させられました。

埜庵 公式サイト

(2007/9/19)




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