楽器の風景

 楽器の世界は深い。思い入れのある楽器を紹介していきます。


カスタネット

 Castanet(Spanish)


 小型の木片を指で打ち合わせる楽器。カスタネットと同じような材料・奏法の楽器は世界的にほとんど類を見ません。イスラム圏の「ジル(フィンガー・シンバル)」が民族移動と共に変化し発生したものなのでしょうか。
 「カスタネット」という言葉は、ギリシャ語で「栗」を表す「カスタネア」(またはスペイン語で同じく「栗」を表す「カスターニャ」)にスペイン語の「小さい」を表す接尾語の「ネット」がついたものです。強いて訳せば「小さな栗」ということになるでしょう。何故栗かと言えば、栗の木を材料に使用したという説と、形が栗に似ているという説の2説があります。その両方なのでは無いかと個人的には思います。なお「パリージョ」と呼ぶこともあります。

 奏法は極めて特殊で、親指に紐をひっかけて、残りの四指で打ち合わせるというもの。まともに音が出せるまでかなりの鍛錬が必要。しかしながら、カスタネットの指使いは他の楽器(タブラやダラブッカなどなど)にも応用可能なものなのですので、民族楽器を楽しみたいのなら決して無駄な練習になることはありません。
 材質はファイバー、黒檀、紫檀、ローズウッドなどなど、様々なものがあります。一般的なのはローズウッドと黒檀。


 カスタネットにはスパニッシュ以外にも改良されたタイプの楽器が存在します。改良の背景には、奏法が困難であることが一因としてあるのでしょう。その音色は異化効果たっぷり(プロコフィエフの諸作などにおける効果を思い浮かべてください)で、西洋音楽作曲家としては是非使ってみたい、しかし西洋音楽のコンテクストで使うためには、ちょっと打楽器奏者としては奏法的に専門外な訳です。指を使う打楽器は西洋音楽に無いですからね。そこで改良が加えられたわけです。


スティック・カスタネット

 スパニッシュより平易に演奏が可能なスティックタイプ。フラメンコ以外ではこちらが一般的。表現力では勿論スパニッシュには劣るのですが…。


マシン・カスタネット

 スティック・カスタネットがさらに合理化されたもの。持ち替えが必要なクラシック曲で重宝します。こちらのタイプは連打も容易。(スティックタイプは前打音(フラム)が付いてしまいます=二度鳴ってしまいます)

メタル・カスタネット

これは分類的にはカスタネットより、フィンガー・シンバルに近い。サン=サーンスの「サムソンとデリラ」の中の「バッカナール」で使われるので有名。

(以上カスタネット協会ホームページより)

*参考
サン=サーンス:「サムソンとデリラ」より「バッカナール」




Carmen De Vicente - Amazing castanet playing!
 美しい超絶技巧。



Castanet Virtuosa Carmen De Vicente - 2007
 スパニッシュ・ダンスの絶技。踊りながら叩くには並外れた技巧を必要とします。同じくCarmen De Vicenteの演奏。





 ちなみに、割れてしまった時は木工用ボンドで接着できます。以前無茶な叩き方をして黒檀の楽器を割ってしまったのですが、なんと駄目もとで試した木工用ボンドでくっ付いてしまいました。少々音は低くなりましたが、ほとんど新品と遜色ないレベルです。勿論今も現役の楽器です。割れてしまっても悲嘆せずにボンド接着を試してみましょう。黒檀、紫檀やローズウッドな接着出来るはずです。ウソみたいなホントの話。



購入者希望者向け情報

 値段はまさにピンキリ。値段と質が比例しない場合も多々あり、3〜4,000円で十分に良い品を手に入れることも可能です。もっとも本当に良い、プロ用の楽器は3〜40,000円と桁が違ってきますが…。無難に済ませるのなら、LP、プレイウッドなどの大手楽器メーカーの品がオススメです。私の楽器はプレイウッドのCA-12L、定価12,800円です。1,000円で買った樹脂製のカスタネットもありますが、こちらは使い物になりません…。ローズウッドのものも叩いたことがありますが、ちょっと音が軽すぎて好みではなかった記憶があります。
 比較的実店舗においてあることが多い楽器なので、是非叩き比べをしてみて好みの楽器を買いましょう。音色や叩き心地は、材質や各商品によって想像以上に差があることでしょう。




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