トップページへ

美術展メモ

鑑賞した美術展の備忘録。



森村泰昌「美の教室、静聴せよ」展@横浜美術館






 夏真っ盛り、湿度全開、不快指数最高潮の横浜をプラプラと散策しながら、涼しさを求め横浜美術館へ。個人的に大好きな森村泰昌の展覧会がやっていたので吸い込まれるように入館。ふぅ涼しい。

 これがなかなか珍しい形式の展覧会で、あまり美術に触れない私のような輩には大変楽しいものでした。「美の教室」というだけあって、展覧会はmp3プレイヤーを使った受講形式で進められます。まず、「ホームルーム」として学校の教室を模した部屋で画面に映る森村泰昌自身の説明を受け、無料で貸し出してくれるmp3プレイヤーを携え、1時間目~6時間目をこれまたモリムラ自身の説明で受講します(だいたい各10分で、1時間ぐらいかかります)。展覧会はそれで終わらず、「放課後」として新作である「三島由紀夫のものまね」も観賞でき、全5問の卒業試験を受ければ「美」と刻まれている洒落た缶バッジまで無料で貰えます。
 軽い気持ちで観覧するつもりでしたが、予想外に充実した展覧会でした。やはり美術に、森村泰昌に詳しくない者としては、森村泰昌自身の説明が嬉しいですね。もっとも展示は代表作ばかりで、自身による解説も目新しいことは恐らく言っていないので、モリムラフリークには物足りない展覧会かも知れませんが…。
 たくさんの面白い展示があった中でも、5時間目のフリーダ・カーロの展示が面白かったです。フリーダ自身のぶっとい眉毛を再現するために、モリムラは付け髭を眉毛として使用したそうです。フリーダ・カーロへの愛と敬意が感じられる一方、爽やかな笑いも供給されてなんとも言えぬ幸せな気分になりました。6時間目の『「笑い」を搭載したミサイルの話』でも語られていましたが、笑いには「怒り」や「戦争」をまったく解決してしまう力がありますね。芸術には、感動・共感・興奮・癒しなどなどのさまざまな効能がありますが――「芸術」という尊大な言葉からはつい敬遠されがちですが――「芸術」には「笑い」という効能も確実に“アリ”だなぁと改めて感じさせられました。

 ちなみにmp3プレイヤーは一時期ネットで話題になった、上海問屋の999円プレイヤーでした。説明書が配布されたこともあって至って滞りなく使うことができ、年配の方々もなんなく使いこなしているようでした。すっかりこういった電子機器には慣れてしまっていますが、ふと冷静に考えるとmp3プレイヤーを使って作者の説明を聞きながら作品を観れる、って結構すごいことですよね。時代はかくも、美術鑑賞の術はかくも進んでいるのか。


展覧会の詳しい内容は以下の通り。森村泰昌の作品に詳しい方なら展示物が推測出来るかと思います。

ホームルーム
1時間目:フェルメール・ルーム [絵画の国のアリス]
2時間目:ゴッホ・ルーム [釘つき帽子の意味]
3時間目:レンブラント・ルーム [負け犬の価値]
4時間目:モナリザ・ルーム [モナリザのモナリザの、そのまたモナリザ]
5時間目:フリーダ・ルーム [眉とひげ]
6時間目:ゴヤ・ルーム[「笑い」を搭載したミサイルの話]
放課後:ミシマ・ルーム



 また、横浜美術館は企画展のチケットを買えば、コレクション展も観覧することが出来ます。こちらは「日本画にみる動物表現」「展開するセルフ・イメージ」「ミロとデルヴォーの版画」「長谷川潔:模写から創造へ」「シュルレアリスムと写真」という盛りだくさんな内容。シュルレアリスムもデルヴォーも日本画も大好きなので、どれも非常に楽しめました。横浜美術館はやはり素晴らしい。横浜住民(と書いてハマっ子と読む)の誇りですね。9月29日から始まる「シュルレアリスムと美術-イメージとリアリティーをめぐって」展も必ずや訪れます。


2007年7月29日(日)




トップページへ


inserted by FC2 system