トップページへ

美術展メモ

鑑賞した美術展の備忘録。



シュルレアリスムと美術 イメージとリアリティーをめぐって@横浜美術館






 「まだやってるな、いつか行こう」と思いつつ日々をだらだら過ごしているといつの間にやら会期最終日の12月9日。たまたま予定が無かったので急いで観に行きました。計画性が大事です。

 有名作品が数多く展示されており、初心者からマニアまで楽しめる、大変良質な展覧会でした。個人的に特に感銘を受けたのは、マッタの「1944年」という作品。2メートル近い大作なんですが、異様な禍々しさを発しており、誇張抜きで恐ろしくて近寄れないほどでした。


  マッタ「1944年」


 ご覧の通り、この作品に描かれているものそれ自体は、具体的な形を持たない“イメージ”です。ですが我々はこの意味不明なイメージを一目見ただけで、思考と言うプロセスをすっ飛ばして、直感的に・無意識的に“恐ろしさ”を抱くのです。具体的に死体のような恐ろしいものを描いていないのに、あたかも実際に死体を見てしまったかのような感情を抱かせる。私の勝手な造語ですがm、「無意識の連想作用」、これはシュルレアリスムにおけるキーワードと言って良いでしょう。

 現実には存在しない、超現実的なイメージが無意識的に特定の感情を呼び起こす、という意味ではイヴ・タンギーの作品もまた素晴らしい。


  タイトル失念!


 私はこの絵に何故か郷愁を抱きます。こんな風景観たことが無いはずなのに、どこか懐かしいんです。実物の絵を前にすると、感動と郷愁でふと涙さえ流れそうになりました。ひょっとしたら我々を構成する原子やクォークの中の世界はこんな風になっていて、我々は胎児の頃にこんな風景を見ていたのかも知れません。

 広告とシュルレアリスムの関係についての展示も大変興味深かったです。「イメージが無意識的に感情を呼び起こす」という点で、広告もシュルレアリスティックと言えるんですね。言われて見れば“シュール”で興味をそそる広告ってたくさんあります。(Google画像検索:広告

 と、イメージの問題について少々書いてしまいましたが、シュルレアリスムの魅力は理論・屁理屈・専門用語抜きに、直感的に楽しめることです。この展覧会は終わってしまいましたが、美術に不慣れな方も絶対に楽しむことが出来るので、機会があったらシュルレアリスムをきっかけに美術の世界に触れてみるのも良いでしょう。


2007年12月10日(月)




トップページへ


inserted by FC2 system