YouTubeでクラシック入門・夢十夜 ~はじめに


 クラシックが敬遠される理由の一つとして「何から聴いて良いか分からない」ということが挙げられるでしょう。これは確かに重要な問題で、マーラーやワーグナーや現代音楽をクラシックの知識がまっさらな状態で聴いても、ちんぷんかんぷんでいつの間にか寝てしまうのが関の山です。というのもマーラーなどは“理解する”タイプの音楽で、それはピカソの絵画やゴダールやフェリーニのメタ映画と同じで、観賞しようとする対象の芸術への知識が求められるタイプの芸術だからです。これは芸術以外の全てのことに言えることで、例えば私は一流のフレンチを食べてもせいぜい「へぇさすがに美味しいなぁ」程度の間抜けな感想で終わりますが、それを一流の料理人が食べれば「これは!隠し味に醤油を入れているのか!馬鹿どもに車をあたえるな!」という料理の知識があるからこその、深い感動を味わえるのです。

 クラシック、JAZZ、ワイン…「高尚」とされるものは知識が必要とされることが多く、初心者にとっては取っ付きにくいものです。しかし多くの場合それは「高尚」であっても決して「難解」ではなく、それを無意識に楽しんでいくうちに難なく理解できるようになるものです。ライトノベル読者がいつの間にかドストエフスキーを読んでいる、「ビールは苦くてねぇ」とチューハイしか飲まなかった人がいつの間にか輸入ビール通になっている、「アルマゲドン最高!」と言っていた人がいつの間にかミニシアター系映画マニアになっている、なんて現象は身近によくあることです。

 そう考えるといかに“きっかけ”というものが大事かということが分かります。YouTubeはその点において革命的で、こうして居ながらにして、無料でクラシック音楽を動画付きで視聴することを可能にしました。このページではクラシック入門に相応しい音楽を、十夜に分けて紹介します。一夜30分を目安に書いています。無論、一気に読み進めても、1曲ずつ楽しんでもかまいません。前置きが長くなりましたが、このページがクラシック通へのきっかけとなればこれ以上の喜びはありません。


それでは第一夜へどうぞ




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